ネパール(カトマンドゥ盆地)には中期ベンガル語で書かれた演劇写本や歌 詞集写本が多く存在する。これらは中世マッラ王朝の宮廷や寺院で上演された ものであるが、その中に、中期ベンガル語最初期の詩人ボル・チョンディダ シュのクリシュナ歌詞や、好色冒険物語「ヴィディヤー姫とスンダラ王子」の 最初のバージョンとされるベンガル・ゴウル王朝の宮廷詩人シュリーダラの作 品が含まれていることが判明した。したがって、ネパールに伝わるベンガル語 戯曲・歌詞写本群は、従来考えられていたようなベンガル文学の亜流・傍流な どではなく、むしろ主流の初期の形を保存していると考えられることを論じた。