パルダとは、南アジア地域に広く存在する女性隔離の制度であり、その実践として身体的に居住空間を分離することと、女性が衣類を用いて顔や身体を隠すことの二つの側面が存在する。先行研究において、社会経済状況の変化に伴ってパルダの実践方法は変化するものとされてきた。本研究の調査対象地域であるパキスタン・パンジャーブ州J 村においては、パルダの実践方法としての女性の被服の方法が、グーンガトと呼ばれる顔全体を隠す方法から、ナカーブと呼ばれる鼻から下を覆う方法へと変化した。J 村の年配女性たちはこの変化を女性たちが恥(sharm)を感じなくなった結果であると述べる。では、J 村におけるこうした装いの方法の変化は、どのような背景のもと生じたのであろうか。そして、「目を隠す」方法から、「目を見せる」方法へと顔覆いの方法が変化したことは何を意味するのであろうか。本稿においては、現代パキスタン農村部におけるパルダの実践方法の変遷を明らかにするとともに、その背景と意味を考察する。