1996 年 5 巻 2 号 p. 1-21
ソフトウェア開発において、その最上流工程にあたる要求獲得は難しいとされているが、定型的でない業務分野を対象とした情報系システム開発においては、それが特に困難である。本研究では、情報系システム開発の要求分析段階を対象とし、ユーザに要求を視覚的に表してもらうことでユーザと開発者のコミュニケーションを支援する環境を提案する。具体的には、ユーザがオブジェクト・アイコンを用いて視覚的に要求を表現し、各オブジェクトに対応するカードには「機能」や「必要理由」などの内容を記述してもらう。このとき、ユーザが要求を完全に記述することを支援するために、オブジェクトの種類とその関係をあらかじめ分類しておき、この分類と各関係に対応づけられたキーワードの抽出によって要求内容をチェックする。開発者はユーザの要求内容を統合し、必要に応じてユーザに質問をし、場所や状況別の仕様書を自動的に獲得することができる。こうして、効率的に質の高い要求獲得ができる。実際に、提案する環境を試作して評価実験を行い、本提案内容の有効性を示し、適用範囲などについて検討を行った。