日本外傷学会雑誌
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症例報告
鈍的頭部外傷による重度意識障害に頸髄損傷を合併した症例の検討
喜多村 泰輔田中 潤一梅村 武寛紙谷 孝則西田 武司大田 大樹川野 恭雅村井 映石倉 宏恭
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2011 年 25 巻 4 号 p. 436-441

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抄録

 背景 : 鈍的頭部外傷による重度意識障害症例では初期診療時に十分な神経学的所見が観察できず, 頸髄損傷の的確な診断は困難である.

 対象 : 2003年から2008年の6年間に搬送された鈍的外傷患者1,313例のうち, Glasgow Coma Scaleが8点以下の重度意識障害に頸髄損傷を合併した5例について検討した.

 結果 : 搬入時の収縮期血圧は4例が100mmHg以下で低血圧を呈したが, 頻脈は認めなかった. 頸椎損傷の診断は3例が頸椎単純X線で, 残る2例は各々CTとMRIを必要とした. 3例に呼吸筋麻痺を伴う四肢麻痺を認め, その損傷高位はC1/2とC2/3であった.

 考察 : 鈍的頭部外傷による重度意識障害患者の麻痺の確認は極めて困難であり, 頸椎単純X線やCT所見より頸髄損傷を強く疑う必要がある. 頻脈でない収縮期血圧100mmHg以下の症例は, 神経原性ショックとして捉えることが重要である. また, 重度意識障害と頸髄損傷が合併した場合は高位頸髄損傷による呼吸筋麻痺を伴う四肢麻痺を念頭に置く必要がある.

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© 2011 一般社団法人 日本外傷学会
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