日本外傷学会雑誌
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総説
骨盤輪損傷における仙骨骨折の治療戦略
八幡 直志鈴木 卓新藤 正輝
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2015 年 29 巻 2 号 p. 36-42

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抄録
 骨盤輪損傷の中でも仙骨骨折は大量出血,神経損傷,軟部組織損傷などを合併しやすく,治療に難渋することが少なくない.また,同じ仙骨骨折でも,骨折部位や形態,不安定性は患者によって様々で,全身状態と局所状態の双方を勘案した治療が求められる.骨折に対する治療としては,頻度の高い側方圧迫型損傷で仙骨骨折部の転位が少なく前方が嵌入したものは保存的治療が標準となってきている.一方,墜落外傷などで起こる完全不安定型骨折では,創外固定による骨折部の安定化は困難であり,強固な内固定を行わないと,術後に転位をきたし,機能予後に悪影響を及ぼすことが明らかとなってきた.神経損傷合併例に対する治療では,保存的加療でもある程度の割合で神経障害が自然回復する例があるものの,手術により早期の骨折部の安定化や除圧を支持する報告が増えてきている.今後の研究や治療戦略の発展が注目される.
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© 2015 一般社団法人 日本外傷学会
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