日本外傷学会雑誌
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総説
出血性ショック蘇生後の病態と高張食塩液輸液の効果
村尾 佳則中尾 隆美濱口 満英太田 育夫丸山 克之植嶋 利文
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2018 年 32 巻 2 号 p. 51-58

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抄録

 出血性ショック蘇生後の臓器障害の病態を高張食塩液 (7.5%NaCl, 4ml/kg) と乳酸リンゲル液投与群で検討した. 出血性ショック蘇生後において好中球機能は高張食塩液投与のタイミングにより抑制されたり増強されたりする. 出血性ショック蘇生後2時間でサイトカイン (Interleukin-6 (IL-6), Interleukin-10 (IL-10), Monocyte Chemotactic Protein-1 (MCP-1), Tumor Necrosis Factor-α (TNF-α)) が上昇した. 高張食塩液は炎症性サイトカインを抑制した. 出血性ショック後24時間で肺障害をきたし, 高張食塩液投与は乳酸リンゲル液投与より肺障害が有意に軽減した. また, 早期投与の方が肺障害を軽減した. 小腸ではアポトーシス発現が2時間でもっとも強くみられ, 小腸障害は6時間でみられた. 高張食塩液投与によりアポトーシス発現および小腸障害が乳酸リンゲル液投与に比較して有意に抑制された. 高張食塩液投与により腎障害に影響は認められなかった. 出血性ショックにおいて高張食塩液投与は少量のボリュームで血圧上昇作用があるため, 今後プレホスピタルを中心として, 臨床で有用となる可能性がある.

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© 2018 一般社団法人 日本外傷学会
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