日本外傷学会雑誌
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症例報告
門脈血栓を合併した肝損傷にヘパリン起因性血小板減少症 (HIT) を発症した1例
久宗 遼西山 和孝野首 元成坂口 昌幸酒井 龍一
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2021 年 36 巻 1 号 p. 5-10

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抄録

 症例は31歳男性. 自動車事故を起こし当院に救急搬送された. 来院時, 血圧 99/66 mmHg, 脈拍 94 回/分, FAST陽性であった. 造影CT検査でextravasationを伴う日本外傷学会肝損傷分類 III b型と診断し, transcatheter arterial embolization (TAE) を施行した. 観血的動脈圧測定を開始し, 第3病日の造影CT検査で新規に門脈血栓を認め, 第7病日からヘパリン投与を開始した. 第11病日より血小板数減少をきたしヘパリン起因性血小板減少症Heparin-induced thrombocytopenia (HIT) と判断した. ヘパリン投与を中止したが, HITの治療開始が遅れたため新規に静脈血栓を併発した. 近年重症外傷でHITを発症することが報告されており, 外傷例でもHITを疑う際は, 止血が得られていれば適切な代替抗凝固治療を早期に行う必要があると考えられた.

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© 2022 一般社団法人 日本外傷学会
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