日本外傷学会雑誌
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臨床検討
高知県における病院前ターニケット使用の実情
奥田 龍一郎山川 泰明小松原 将松本 俊之
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2024 年 38 巻 3 号 p. 429-434

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抄録

目的

 高知県の三次救急病院の一つである当院において, 病院前ターニケット使用の実情について調査し, 有効性や問題点を検討する.

方法

 単施設後方視的研究. 対象は2019年から2022年までの間に, 当院へ救急搬送されたISS (Injury Severity Score) が9以上の外傷患者である.

結果

 調査期間中の対象外傷患者は全853例であり, うち上肢外傷が194例, 下肢外傷が459例であった. 病院前ターニケット使用例は5例であり, 年齢は中央値57歳 (範囲43~83歳), 全例男性, 上肢2例, 下肢3例であった. 5例中1例のみ動脈損傷 (腓骨動脈損傷) を認めた. ターニケット装着時間は中央値50分 (範囲35~267分) であった. ターニケットによる合併症として, 大腿静脈内血栓が1例, 圧不足による静脈性出血の助長が1例あった.

結語

 ターニケットが有効であった症例がある一方で, 使用法の間違いや長時間の使用による合併症もみられた. ターニケット継続時間が2時間を超える症例もみられ, 今後改善すべき課題と考えられる.

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© 2024 一般社団法人 日本外傷学会
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