抄録
 日本外傷学会トラウマレジストリー検討委員会を中心に, 2003年に設立・登録が開始されたJapan Trauma Data Bank (JTDB) は, 2019年に新たなデータシステムに移行し, 2023年現在ではおよそ300を超える施設が参加している. 2003年から現在までに20万例以上の症例が集積され, 約200編の英語論文が報告されている. 一方で, トラウマレジストリーの当初の目的の一つは, JTDB登録症例の解析結果を各医療機関にフィードバックし, 外傷診療の質の向上を図ることであったが, その目的は現在も十分には達成されていない. 今回, トラウマレジストリー検討委員会では「日本外傷データバンクデータを用いた外傷診療施設評価体制を構築する為の小委員会」を新たに設置し, 日本全体の外傷診療の底上げを目指して, JTDBを活用した各医療機関へのフィードバック体制の構築を検討している. 本稿では, 第39回日本外傷学会総会・学術集会で発表した内容を中心に, 我々の取り組みを紹介する.