論文ID: 37.3_11
背景
我が国で外傷診療の質が経年的に評価された研究は少ない.
対象と方法
2009-2019年に千葉県内で発生した交通事故による24時間以内死亡者のうち救急隊接触時に生命徴候が認められた患者 (patient with sign of life : SOL+) を対象とした. 警察, 消防および医療機関から経時的な情報が収集され, 事例検討会 (peer review) で各症例は「防ぎ得た外傷死Preventable Trauma Death : PTD」, 「PTDの可能性 (potentially-PTD : p-PTD) 」および「救命不能」に分類された.
以下の仮説を検証した.
(1) PTDとp-PTDの割合 (以下PTD率) は経年的に低下した
(2) PTDとp-PTDで循環管理と止血術に問題がある
(3) SOL+を多数受け入れている救命救急センターではPTD率が低い
結果
対象785例のうち65例がPTD, 86例がp-PTDと判定された. 仮説(1)(2)(3)はいずれもその通りであった. (2)では70例 (46%) で循環管理/止血術に問題ありとされた.
結語
千葉県の交通事故死亡事例においてPTD率は経年的に低下した. PTD/p-PTDの46%で初療室での循環管理/止血術に問題があった.