抄録
本稿では、まず、スキナー自身の生き方と彼が高齢期をエンジョイする方法として提案した内容について紹介し考察する。彼自身も加齢に伴う心身の老化を体験していたようであり、晩年にはかなり重篤な疾病に罹っていた。しかし、余命もわずかであることを告げられたときにも、死や疾病の不安・恐怖を克服することよりも、不必要な不安・恐怖を持たないでいることを強化し維持する方策の方に関心を向けていたようである。彼はまさに「老いの生き方」の素晴らしいモデルであると云うことができよう。本稿の後半では、高齢者の行動分析的アプローチの現状について述べたのち、いくつかの実践事例を紹介し考察する。この種の研究はまだ緒についたばかりであり、今後の研究が望まれる多くの課題が残されている。今後に期待したい。