抄録
社会科学の質問紙調査でしばしば報告される態度と実際の行動との相違を、行動分析的な観点から言行不一致ととらえて論議した。従来の行動分析研究からは、言語行動が強化される一方で、その内容とは一致しない非言語行動が強化されると言行不一致が生じ、強化随伴性にもとづく操作によって制御可能なことが示されている。この知見から、個体内部の態度は質問紙によって測定でき、態度は行動として現われるとする従来の基本的な仮定に対して疑問を呈した。単一被験体法を用いて外的環境と個体行動との機能分析を押し進める行動分析が、今後の社会科学研究や社会問題の解決に貢献し得る可能性が示唆された。次に、行動分析の多様な研究内容の発展と比較して、誤解や曲解のためにその普及が遅れている点について論議した。その理由として、行動分析家による極端な環境主義的主張の継承や普及行動の欠如が考えられた。行動分析の活用と同時に、学会による組織的な普及活動が21世紀に向けて期待される。