抄録
本稿の目的は、実験的人間行動分析で行われたルール支配行動に関する研究を展望することである。主な結果は以下の通りである。(a)教示は反応の効率的な生起には有効であるが、随伴性の変化に対する感受性を低減させる。(b)教示に抵触する随伴性は、教示に従う反応を消失させる。(c)教示とスケジュールが一致する履歴は教示に従う反応を促進する。(d)自己ルールに対する随伴性が人工的にプログラムされていないなら、自己ルールと非言語反応には相関関係がある。(e)自己ルールが形成されるとともに、非言語反応はそのルールに連動するが、より弁別性の強い強化スケジュールに抵触するルールの場合、非言語反応は連動しない。(f〉自己ルールと非言語反応との連鎖を強化することによって、自己ルールと非言語反応との相関関係が生まれる。考察では今後のルール支配行動研究の方向性について、社会的随伴性という観点から論じた。