行動分析学研究
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単一事例計画法における処遇効果のC統計による検定
河合 伊六河本 肇大河内 浩人
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1988 年 2 巻 p. 36-47

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抄録

本研究では, まず単一事例計画法における処遇の効果の取り扱い方について触れ, 従来からの視覚的検討もしくは分散分析法による検定に代わって, 最近では, 種々の時系列解析の方法が提唱されるようになったことを指摘した。続いて, 処遇の効果に関するJones et al.のモデルを, 公刊されたデータに基づいて検討して修正を加えた上, この種の処遇効果を検討する簡便な方法として提案されたTryonのC統計について, 紹介・検討した。そして, Journal of Applied Behavior Analysis誌中に掲載されたデータのうち, ベースライン期がほぼ水平で, ベースライン期と処遇期のデータがいずれも8個以上であるものについてC統計の適用を試み, 原著者が視覚的検討に基づいて誘導した結論と, 一部分食い違う結果が見いだされた1例について比較考察した。さらに, C統計が, データの安定性の評価の方法として活用できる点とBlumbergによって指摘された問題点についての考察を行った。以上の検討・考察の結果, C統計は, 適用にある限界をもちながらも, 視覚的検討に基づく結論の妥当性を簡便な手続きによって傍証しうるものであり, 一定の条件を持つデータについては, 視覚的検討とC統計が併用されることが望ましいことを指摘した。今後さらに, 種々のデータヘの適用を試み, C統計の有用性について検討したい。

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© 1988 一般社団法人 日本行動分析学会
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