行動分析学研究
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認知症ケアにおけるシングルケースデザインの活用と課題(記念シンポジウム)
藤原 誉久
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2015 年 29 巻 Suppl 号 p. 203-211

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抄録

高齢者施設には在宅介護が困難となった認知症高齢者が多く入所している。施設の職員には周辺症状への専門的な対応が要求されるが、従来の認知症ケアでは介入による周辺症状の減少を実証的に示せていないのが現状である。今回認知症高齢者である対象者の周辺症状の機能を三項随伴性でアセスメントし、シングルケースデザインを用いて行動原理に基づく介入を行った。三項随伴性によるアセスメントではスタッフと対象者との相互の関係性を分析したところ、周辺症状を減少させているスタッフは対象者の行動の機能に合わせて対応していたことが明らかになった。そこで他スタッフにも望ましいケアを具体的に行えるよう介入した結果、対象者の周辺症状の出現頻度が低いレベルで安定した。研究デザインでは倫理的な配慮等から根拠の弱いABデザインを用いざるを得なかったが、今後できる限りABAデザイン等を活用し、根拠に基づく認知症ケアとして周辺症状を減少させる具体的なケア方法を積み重ねていく。また施設内でこのような検証を行いやすいシステムを構築することも重要である。

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© 2015 一般社団法人 日本行動分析学会
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