行動分析学研究
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訪問介護事業を展開する企業における組織開発の支援とその課題 : シングルケースデザインの導入をめぐって(記念シンポジウム)
乾 明紀
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2015 年 29 巻 Suppl 号 p. 212-218

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抄録

本研究では、訪問介護事業を展開する企業が組織開発を目的として試行的に形成・導入した「サービス提供チーム」の効果を検証するために、シングルケースデザインに従った実験の実施を模索した。しかし、ヘルパーの負担増加が見込まれたために実験を実施できず、その代わりとしてABデザイン型の準実験が実施されたと仮定したうえでの事後分析を組織開発の実践後に行った。事後分析では、チームに所属することとなった5名の契約ヘルパーを対象にし、「サービス提供チーム」の形成・導入の前後において、ヘルパーが「訪問介護報告システム」を通じて投稿した引継報告の生起回数と内容の変化を調べた。その結果、5名中2名の引継報告頻度の増加と、他の1名の引継報告内容の変容が確認された。このように、ABデザイン型の準実験を仮定した事後分析も、組織開発の成果の一部を可視化する際に有用でありうることが示された。しかし、組織開発の成果を厳密に検証するためには実験が必要であり、訪問介護の分野では実験に必要な情報を取得しにくいという課題が示された。

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© 2015 一般社団法人 日本行動分析学会
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