抄録
わが国の障害児教育は、これまで盲、聾、肢体不自由、知能等の障害別に取り組まれてきた。中でも視覚障害教育はその個有の障害性を重視し、かつ他の障害分野や研究領域との交流も少なかったために、経験的にのみ指導法を確立する傾向が強かった。したがって、教育現場では逸話記録法による実践報告ばかりが繰り返され、研究と言えば古典的なlarge Nアプローチによる能力測定型のものが中心となってきた。一方、米国においては、視覚以外の障害を併せ持つ、いわゆる重複障害児(者)を対象として行動的アプローチによる報告が積極的に導入されている。本稿ではわが国盲学校教育の成立の過程と研究領域を概観し、視覚障害をめぐる教育・福祉ならびにリハビリテーションの発展のために、行動分析的アプローチのこの分野への積極的な導入の必要性と、日常生活の文脈やルール支配行動の視点からの標的行動の決定の方法あるいは問題行動の位置づけをめぐる問題点について論じた。