論文ID: 20-015
心理ネットワークアプローチは、心理的な構成概念(例えば、各種の精神疾患)を「観測変数(例えば、個別症状)同士の複雑な相互作用(ネットワーク)」として理解し、それらのネットワークを実データから推定するものである。本稿では、「臨床革命」という造語を用いつつ、本アプローチが臨床実践の効率化と精緻化という多大なインパクトをもたらしうることを、以下のように順を追って議論する。第1に、本アプローチ特有の用語を紹介し、心理ネットワーク分析が横断的・縦断的どちらのデータにも適用できることを示す。第2に、症状ネットワークの研究知見を参照すれば、より効率的にケースフォーミュレーションを実施できると議論する。第3に、本アプローチを用いれば、心理療法や個別の介入技法の精緻な作用機序を解明できると議論する。最後に、本アプローチを活用する際の留意点と今後の課題について議論する。