校内に生育する雌雄異株のハリガネゴケ(Bryum capillare Hedw.)を14ヵ月間定期的に採集し,配偶子のうの発達,受精の時期,胞子体の発達,減数分裂の時期,および胞子分散の時期に留意して生活環の全容を分析した.あわせて,群落内の微気象(気温と湿度)の測定も行った.その結果,ハリガネゴケは,一つの花序あたり形成される配偶子のうの数が多く,配偶子のうや配偶子の観察に適していること,および胞子体の初期発達過程において長期間の休止状態が存在していることが明らかとなった.したがって,ハリガネゴケを生徒の観察教材として活用することで,生命の連続性や環境に対する植物の巧みな適応戦略を同時に学びとることができると考えられる.