生物教育
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研究論文
接合藻ミカヅキモ(Closterium)の細胞分裂とその教材化
捨田利 謙小川 茂
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2001 年 41 巻 3-4 号 p. 90-99

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抄録

接合藻ミカヅキモはこれまで生物の教材としてしばしば利用されてきた.本研究では単細胞生物における無性生殖と細胞分裂の関係を教えるための教材として,ミカヅキモの活用を試みた.今回検討したミカヅキモの中では,細胞が実体顕微鏡で観察するために十分な大きさを持ち,細胞分裂の過程を酢酸カーミンで染色して光学顕微鏡で観察できたC. moniliferum var. submoniliferumが教材として優れていることがわかった.C. moniliferum var. submonilijerumの分裂指数は,今回の培養条件下で明期周期の暗期開始時に最大となり,約30%に達した.この時期の細胞を用いて細胞分裂の過程を容易に観察することができた.分裂後期の姉妹染色体の分離は,染色体が赤道面に並んでから数分間内に起った.後期には隔壁の形成により母細胞の2つの娘細胞に分裂し,各娘細胞内の葉緑体は分裂を開始してくびれはじめた.各娘核は,細胞の凸面側に沿って隔壁付近から分裂中の葉緑体のくびれ部に移動した.娘細胞は細胞壁の伸長に伴い2つに分離し,葉緑体が分裂して個々の娘細胞は左右相称の細胞へと細胞の形を復元した.以上の細胞分裂の観察をもとに,高等学校における無性生殖と細胞分裂の関係を教えるための教材としてのC. moniliferum var. submonilijerumの活用を考察した.

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© 2001 一般社団法人 日本生物教育学会
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