生物教育
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研究論文
市販のニワトリ上腕骨による骨髄中の血球細胞の観察
―結合組織の教材:「ウィングスティック」―
半本 秀博
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2002 年 43 巻 1 号 p. 2-7

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抄録

高校生物IBの動物組織の学習では,ニワトリの手羽先を用いた軟骨,硬骨,および横紋筋の観察が一部の教科書で取りあげられているのみで,簡易にできる実験観察の開発はあまり行われていないのが現状である.組織の中でも,形態,機能において多様な結合組織は生徒には理解が比較的難しかった.骨も血液も生徒にとって日常的に馴染みのあるものであるが,その関係についてはほとんど理解できていなかった.骨と血液に密接な関係があることは,結合組織の理解だけではなく,免疫やある種の公害病,医療問題などを理解する基礎知識としても有効と考えられる.以上の観点から,組織の学習の際に生徒が直接扱うことができ,骨と血液の関係を理解させることを目的として,ニワトリ上腕骨骨髄を用いた血球細胞観察教材について検討した.食肉店で「ウイングスティック」の商品名で売られているニワトリ上腕骨5銘柄について,骨髄液の採取が可能かどうかを調べた.このうち1銘柄で十分な骨髄液が採取された.採取した骨髄液をスライドガラス上に塗抹し,メタノール固定,ギムザ染色を施したあと,軽く水洗したものを検鏡した.赤血球や白血球などの血球細胞が観察された.本観察を生徒の観察実習として実施した.1本の「ウイングスティック」を生徒の前で割って骨髄液を採取してもちいれば,1クラスの生徒全員が容易に標本作成し血球の観察をすることができた.

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© 2002 一般社団法人 日本生物教育学会
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