生物教育
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研究論文
脳下垂体の解剖観察
―医療系専門学校における実施とその効果―
高橋 哲也村田 公一中山 広之岩澤 淳水谷内 香里兵藤 博行
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2009 年 50 巻 2 号 p. 52-60

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抄録

本研究は医療系専門学校において,脳下垂体を解剖観察することが意義があるかどうかを検討するために行なった.調査したすべての高等学校生物の副教材,いわゆる「図表」や「図説」において,脳下垂体,大脳および小脳のいずれも用語および図は掲載されていたが,脳下垂体の形態のわかる写真が掲載された割合は0%であり,大脳(63%)や小脳(50%)に比べ有意に低かった.医療系専門学校(高等学校卒業者)の1年生で脳下垂体を「本」,「映像」および「実物」で見たことがある者は35%であり,これは大脳や小脳を見たことがある者よりも有意に低かった.ラット,ニワトリおよびアフリカツメガエルを材料として脳下垂体の解剖観察を試みたところ,解剖の容易さ,コストおよび器官の大きさの点で,観察にはニワトリが最も適していた.また,ニワトリを使った場合,新鮮なものの方が冷凍されたものよりも器官の鮮明さの点で観察に適していた.解剖観察によってニワトリの実物の脳下垂体を見た学生は,「思っていたのと違った」と答えた者が「思っていた通りであった」と答えた者よりも有意に多かった.「思っていたのと違った」との答えは,「色」や「形」に比べ,実物を見なければ実感しにくい特徴の「大きさ」に最も起因していた.以上のことから,脳下垂体を解剖観察することは,医療系専門学校の1年生においてこの器官を強く印象づけるのに役立つものと考えられる.

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© 2009 一般社団法人 日本生物教育学会
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