生物教育
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研究論文
自然体験や生物に対する体験が生命観育成に及ぼす効果
―中学生と大学生の調査結果を比較して―
岩間 淳子松原 静郎小林 辰至
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2015 年 56 巻 1 号 p. 1-10

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抄録

本研究では,岩間ら(2014)の大学生の「体験と生命観」に関する分析結果を基に,中学生を対象に「自然等の体験と生命観」に関する質問紙調査を実施し,「体験と生命観」に関する中学生と大学生の意識の相違及び男女の相違を分析した.

その結果,以下のことが明らかになった. (1)中学生,大学生共に,「動物の捕獲・採集」「植物を通した遊び」などの体験に男女差が見られ,動物や植物の生や死に対する意識に相違が見られた. (2)中学生の方が大学生より生命に関する関心が低かった. (3)中学生,大学生共に,男子より女子の方が生命に関する関心が高かった. (4)植物の生命に対する関心は,動物の生命に対するよりも低く「野生植物の枯死」に関しては最も低かった.また因子分析の結果,中学生,大学生共に,体験と生命観の諸因子は有意な正の相関を示していることから,(5)自然体験,生物に関する学習体験及び動物の飼育・接触などの体験は,生命観育成に有効であることが明らかになった.

以上のことから,自然体験や生物に関する体験は生命観育成に有効であることが中学生を対象にした調査からも明らかになった.なお,大学生,中学生共に「野生植物の枯死」に対する関心が最も低く,平均値で大学生が中学生よりも高い傾向を示したものの有意差は認められなかった.生物多様性及び環境教育の観点から,幼児期からの自然体験や動植物に関する体験及び小学校から大学に至る教育課程における生態系に不可欠な植物や微生物などの生命にも関心を持たせる指導が今後の課題となると考えられる

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© 2015 一般社団法人 日本生物教育学会
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