生物教育
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研究論文
黄化芽生えの徒長とジベレリンの関係から植物の環境応答を学ぶ実験教材の開発
園山 博渥美 茂明
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2017 年 58 巻 2 号 p. 30-37

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抄録

準備が容易で,短期間に明瞭な結果が得られる実験教材が見あたらないために,高等学校理科「生物」の「植物の環境応答」の単元の生徒実験の実践はまれである.そこで,土中(暗所)から地表(明所)に出現した芽生えの胚軸は直ちに伸長を停止するという,周知の環境応答を利用して,ジベレリン(GA)の作用の理解を深めることを意図した生徒実験を開発した.生徒実験では,1晩吸水させたホウレンソウのネーキッド種子を,水(対照区),あるいは0.3 × 10−6 Mウニコナゾール溶液(GA生合成阻害剤,処理区)を含ませたバーミキュライトに播き,実験区を2分しそれぞれを暗所と明所で栽培した.5日後に芽生えの胚軸長を測定し,水とウニコナゾール溶液の効果を比較した.暗所に置いた対照区の胚軸は伸長し,明所の約150%の長さがあった.一方,暗所に置いた処理区の胚軸の長さは暗所に置いた対照区より有意に40%も短く,その長さは明所においた対照区や処理区と有意な差を示さなかった.授業実践の前後に,4ないし5の回答文から1つの正答を選択する3問からなる評価試験を行った.暗所における胚軸の伸長促進とGA生合成の増加に関する問における正答率が,11%からそれぞれ,実践の結果88ないし85%に増加した.すなわち,この実践を通して生徒達は,植物の成長や形態に現れるGAを介した環境応答をより良く理解するようになったことがわかった.

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© 2017 一般社団法人 日本生物教育学会
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