2019 年 60 巻 2 号 p. 40-49
植物が環境応答した形態の変化を,植物ホルモンの生合成に関与する遺伝子の発現の消長に関連付けて学ぶ授業実践を行った.生化学的に不安定なmRNAを直接取り扱わずに遺伝子発現を調べるダイレクトRT-PCR法を利用した教材を開発した.明所と暗所で栽培した形態の異なるホウレンソウの芽生えを凍結破砕して得た組織液に直接,逆転写反応を行った.この反応で得たcDNAに徒長に関与するGA3oxidase遺伝子(SoGA3ox)を検出するプライマーを用いたPCRを行うと,電気泳動によってPCR産物を確かめることができる.ダイレクトRT-PCR法を利用した教材による授業を1時間ずつ3日に振り分け,高等学校の生物の授業で実践した.生徒らは,暗所での芽生えの徒長を支えるようにSoGA3oxの発現が続くが,光が当たるとSoGA3oxの発現量が減少し徒長が止るこがを知った.そして,実験前に学んだ暗所での芽生えのジベレリン(GA)を介した徒長と関連させて考えることで,「芽生えは,暗所では伸長するが,明所では伸長が抑制される.」ことへの正しい説明として,「芽生えが光を受容すると,GA生合成遺伝子の発現を調節した結果,暗所にて徒長を支えていたGA量が減少することで徒長が止る.」ということを理解した.このため,評価問題にて正答を選択する生徒が有意に増加した.また,「実験から発現している遺伝子が分かったか」というアンケートに90%以上の生徒が肯定的に答えた.