2019 年 60 巻 3 号 p. 117-129
本研究は19世紀アメリカ合衆国のハイスクール教科「動物学」の変遷過程を解明するものである.当時のハイスクールで用いられていた教科書や各種史料を用いて研究を行った結果,他の生物学系教科であれば各時代を象徴する典型的な目的論・内容論・方法論を見出すことができたが,「動物学」に関しては各時代に全く異なる手法を採用する教科書が存在し,一方向の変化というより,むしろ混沌とした状態にあったことが確認された.特に,“ヒト”に着目してみると,確かに変化していたものとして,実用性に関する質的変化,対立から両立への変化等,従来の通説になかった新たな知見が明らかとなった.そして,これらの変化は学問や学会の影響のみならず,生活や環境,思想や教育理論,生徒のニーズ等,多種多様な要因によって解釈された.