2019 年 61 巻 1 号 p. 2-9
効果的な教材を開発するためには,教材の評価が重要となる.本研究では,進化と系統を結び付けた生物教育の実現に向け,その教材の評価法の確立を目的とし,アンケートの実施と分析を行った.アンケートでは,回答者を教材(共生説と三ドメイン説に関する図)ありと無しのグループに分けて,進化と系統に関する知識を問う選択式の質問と,進化と系統に関する文章の面白い・重要・分からないと思った箇所にそれぞれ下線を引かせる質問に回答させた.選択式の質問から,生物基礎を履修する高校生の結果において,教材を用いると共生説と三ドメイン説の関係に関する質問の正答率が下がるという結果が得られた.また下線の分析から,その生徒達が「原核生物は細菌(バクテリア)と古細菌(アーキア)に大別され,それ以外の生物はすべて真核生物にまとめられる」という文章を分からないと考える傾向が,教材を用いなかった生徒と比べて強いことが分かった.これらの結果から教材を評価すると,この教材には補足の指導を加えるなどの改善が必要であることが示唆された.またこの下線引き評価法を用いて,教材の評価と改善を繰り返し,教材の効果を高められる可能性が示された.