2020 年 62 巻 1 号 p. 29-34
中学校理科第二分野における学習内容「種子をつくらない植物」の観察実験として,コケ植物の仮根は,「基物への付着」以外に「水分吸収」のはたらきも行っていることを確認する生徒実験を開発した.この実験は,自作の容器に0.05%リボフラビン(ビタミンB2)の水溶液を満たし,これに新しく伸長したコケ植物の仮根を浸した後,一定時間ごとに紫外線(352 nm)を照射してリボフラビンが発する蛍光を観察するという簡単なものである.その結果,用いた4種のコケ植物(セン類2種,タイ類2種)において,到達時間に差があるものの,いずれも茎や葉状体の先端までリボフラビンが到達したことが確認された.このことは仮根からリボフラビン水溶液が吸収されたことを示すものであり,これまで科学的に曖昧な事項とされていた内容について,生徒自らが行った実験結果をもとに科学的考察を行うことができる内容であり,より教科の目標に近づく観察実験であると考えられる.