バイオフィードバック研究
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バイオフィードバックを介した心理面接(シンポジウム からだからこころへのアプローチ-バイオフィードバックで何ができるか-)
榊原 雅人
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2007 年 34 巻 2 号 p. 23-30

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抄録

臨床場面におけるバイオフィードバック法(BF),特に筋緊張症候に対する筋電図BFにはさまざまな心理技法が併用されている.本シンポジウムではこの観点から筆者らの取り組みを紹介し,BFを介した心理面接のあり方について述べたい.まず,BFに併用される代表的な技法に自律訓練法(AT)があげられよう.ATは身体感覚へのawareness(気づき)を高め,筋弛緩に寄与することが示唆されている(石田ら,2000).しかし,身体への気づきが得られにくかったり,AT習得が困難な場合は他の技法を選択することになる.筆者らはATの他,呼吸法(榊原,1993)や動作法を筋電図BFに併用してきた.これらの技法はBFセッション中のみならず,より日常場面での筋弛緩を助ける方略として有用である.しかしながら,筋電図BFとATの併用によって頸部筋電図が低下したにもかかわらず,日常では改善がみられず難渋した痙性斜頸の一例も経験した(榊原ら,2002).この際,患者がどんな生活のあり方を望み,その中で筋弛緩がどのように行われるのかを検討するため,BF面接に解決志向療法(Solution-Focused Therapy : SFT ; Berg et al., 1992)を取り入れた.SFTとは患者のもつ解決像(症状がなくなったらその代わりに生活はどのように違ってくるか,症状が少しでも軽減した時はどんな状況だったか)に焦点を当てる面接技法である.セッションを重ねるうちに,患者は自ら望む生活(例えば,友人関係に関わる多様な行動)を少しずつ実現させながら独自のスタイルで頸部のコントロールに取り組み,やがて症状が改善した.これは解決像の構築に伴ってさまざまな筋コントロール(行動)が自発的に発現することを示した例であった.BF面接に求められるものは,セッションにおける身体過程のコントロールと日常への効果の持続であろう.ATや呼吸法などの技法はこれらに寄与する可能性をもっている.加えて,解決に傾聴することは患者の自発的なコントロールを促すきっかけになるかもしれない.「BFと心理技法の併用」とは日常でのコントロールがいかに達成されるか(いかに動機づけられるか)という意味において「BFを介した心理面接」であると考えている.

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© 2007 日本バイオフィードバック学会
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