バイオフィードバック研究
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論文
オープンスキル種目選手のメンタルローテーションの認知スキル : 事象関連電位を用いた評価の試み
松本 清今川 新悟佐久間 春夫
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2017 年 44 巻 1 号 p. 29-36

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抄録

 熟練した選手のパフォーマンスは, 運動スキルだけではなく認知スキルにも支えられている. 特にオープンスキル種目では, 選手は刻々と変化する環境をより速くより正確に把握しなければならない. そのため, 認知スキルは競技レベルの構成要素と考えられ, 選手への効果的な指導を行うためには認知スキルの評価も必要となる. 選手の認知過程にはいくつかの心的操作が関与し, メンタルローテーションはそれらのうちの1つと考えられる. 本研究では, オープンスキル種目選手の認知スキルの基礎となる認知過程の特徴について, Rotation-related negativity (RRN) を用いて特定することを目的とした. RRNは, 心的イメージの回転によって生起する事象関連電位 (ERP) の1つである. 熟練したアイスホッケー選手 (Athlete群) とスポーツ選手ではないControl群を対象に, アルファベットを用いたメンタルローテーション課題を実施し, 同時に脳波の記録を行った. 提示刺激の回転角度がより小さい (Smaller-angle) 条件とより大きい (Larger-angle) 条件に分け, 各条件の正答率, 正答した試行の平均反応時間およびRRNが出現するとされる区間の平均振幅の算出を行った. その結果, Athlete群はControl群よりも正答率は低いが反応は速い傾向にあり, オープンスキル種目選手は反応の正確性よりも速さを優先することが示された. 提示刺激の回転角度が大きいときに, ほとんどの被験者においてRRNは観察されたが, Athlete群とControl群との間に振幅の差は得られなかった. 各測定項目について, Larger-angle条件の値からSmaller-angle条件の値を引いて変化量を求めたところ, 各電極のRRN振幅 (RRN出現区間の変化量) と正答率の変化量との間には, 有意な正の相関が認められた. さらに, Athlete群の散布図では, 選手のポジションがその分布に影響を与えていると考えられ, ゴールキーパーは正確性を維持しようと努め, それ以外のフィールドプレイヤーはより速い反応を優先しているとの解釈が可能であった. これらの結果は, オープンスキル種目選手の認知的スキルがメンタルローテンションの課題成績と精神生理学的反応を用いて評価できることを示唆している.

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© 2017 日本バイオフィードバック学会
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