バイオフィードバック研究
Online ISSN : 2432-3888
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シンポジウム
医療からみた次世代バイオフィードバック
都田 淳小山 明子中村 祐三竹内 武昭端詰 勝敬
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2018 年 45 巻 2 号 p. 69-72

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抄録

 医療の視点からバイオフィードバックの将来を予測するに際して, いくつかの方向性を思い描くことができる. まず既存のバイオフィードバック療法の発展型として, 取得できる生体情報の多様化とフィードバックの利便性の向上が期待される. 既に腕時計サイズのデバイスによる心拍数・体温・皮膚電気抵抗といった生体指標の測定がスポーツトレーニングなどに活用されており, スマートグラスと連動させることでリアルタイムでのフィードバックは容易に実現可能という段階に来ている. モーションキャプチャーによるフォームの矯正など, 大掛かりな器材を要していたものに関しても手軽に扱えるようになっていくであろう.

 これまで扱いにくかった身体的な侵襲を伴う生体情報の取得についても, 実用化が進む可能性がある. 糖尿病の治療に際して持続的血糖測定 (continuous glucose monitoring ; CGM) が実用化されており, 極細のカニューレを腹部の皮下組織に刺入することで24時間の連続的なモニタリングが可能となっている. 間欠的な血糖測定ではキャッチできなかった血糖変動を記録してインスリン治療の調整に用いるためのものであるが, 既存のデバイスでもリアルタイムでの測定値の参照が可能なことから, 行動療法的なアプローチにも応用が可能である.

 デバイスが進歩してバイオフィードバックに応用可能な情報量が指数関数的に増加していった場合に, 医療サイドに求められるのは適切な評価と治療応用に際しての指導が中心となると考える. 生体指標の数値変動に拘るあまり健康を損ねる方向へ行動が強化されていかないよう, また臨床的に意義のない情報が扱われないよう, 適切なコメントを発信していくことが重要となって来ると思われる.

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© 2018 日本バイオフィードバック学会
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