バイオフィードバック研究
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招待講演
アザラシ型ロボット「パロ」によるバイオフィードバック・セラピー:世界の医療福祉制度への組込と社会課題解決への貢献
柴田 崇徳
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2022 年 49 巻 2 号 p. 65-72

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抄録

 「パロ」は,一般家庭での「ペット代替」と,医療福祉分野での「アニマル・セラピー代替」を目的としている.パロは日本では「福祉用具」,医療福祉制度が異なる欧米等では「バイオフィードバック医療機器」である.免疫力が弱い患者の隔離病棟等で利用できるように,感染症対策として,パロの人工毛皮には銀イオンを含む制菌・抗ウイルス加工を施しており,使い捨てワイプを用いる掃除・消毒のプロトコルが欧米の医療機関で評価後,承認された.これらにより,さまざまな疾患や障害のある小児から高齢の方々を対象として,在宅介護・在宅医療,高度急性期から慢性期や終末期の医療福祉施設において,世界30か国以上で,コロナ禍でも安全に利用されている.パロのセラピー効果について,各国での臨床試験と治験の結果や,それらのメタアナリシスの結果によりエビデンスを蓄積した.英国ではパロが「NICEガイドライン」の「認知症」の「非薬物療法」に,質が高いエビデンスがある療法として掲載された.アメリカでは,「パロを用いるバイオフィードバック治療」が保険償還される.本稿では,それらのエビデンスと,世界各地の医療福祉制度へのパロの組込状況等を述べる.また,社会課題への取り組みとして,東日本大震災等の被災者や,ロシア侵攻によるウクライナからポーランドへの避難者の「心の支援」でも,パロを活用し,喜ばれている.

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© 2022 日本バイオフィードバック学会
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