行動医学研究
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原著
児童の体系的な推論の誤りが不安障害とうつ病性障害の症状に及ぼす影響
佐藤 寛石川 信一新井 邦二郎
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2004 年 10 巻 2 号 p. 73-80

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抄録
本研究の目的は、児童の体系的な推論の誤りが不安障害とうつ病性障害の症状に与える影響について検討することであった。まず、児童の不安とうつを喚起する場面において特徴的に見られる推論の誤りを測定する尺度を作成するため、児童用認知の誤り尺度 (Children's Cognitive Error Scale; CCES) の改訂を行った。217名の小学生に対して予備調査を実施し、児童がうつを喚起されやすい11の場面を抽出した。そして、これらの場面をCCESの児童の12の不安喚起場面と比較し、一致した9の場面を児童用認知の誤り尺度改訂版 (CCES-R) の場面とした。次に、452名の小学生に対して調査を行い、再検査信頼性およびα係数による内的整合性の検討を行った。その結果、十分な信頼性係数を得ることができた。また、妥当性についても、因子的妥当性と内容的妥当性の観点から検討を行い、CCESは十分な妥当性を有していることが示された。さらに、635名の小学生を対象に調査を行い、推論の誤りが不安障害とうつ病性障害の症状に与える影響について検討した。構造方程式モデリングを用いた分析の結果、体系的な推論の誤りは不安症状とうつ症状のいずれに対しても正の標準化係数を与えていることが示された。また、この影響は、不安症状とうつ症状の間の関連を統制した上でも有意に認められた。以上のことから、体系的な推論の誤りは児童の不安障害とうつ病性障害の症状に影響を及ぼしていることが示唆された。最後に、児童の不安障害とうつ病性障害に対して、推論の誤りに焦点を当てた認知療法的介入の必要性が議論された。
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© 2004 日本行動医学会
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