行動医学研究
Online ISSN : 2188-0085
Print ISSN : 1341-6790
ISSN-L : 1341-6790
原著
行動変容に対する個別助言をコンピュータ化した高血圧予防プログラム(第2報)
—1回の個別化介入による降圧および生活習慣改善—
山津 幸司足達 淑子羽山 順子伊藤 桜子
著者情報
ジャーナル フリー

2006 年 12 巻 1 号 p. 15-24

詳細
抄録

本研究の主な目的は、高血圧予防プログラムの参加者のうち、初回の個別助言を受け取ったがその後の質問には回答せず2回目の個別助言を受け取らなかった者〔1回参加者〕での血圧と習慣の変化を評価することであった。用いたプログラムは、質問票への回答から個別助言をコンピュータで自動出力する通信教育〔健康達人高血圧予防編〕であった。本プログラムは、1ヵ月間に2回の紙媒体の郵送による双方向性の通信で、質問票の回答に基づき自動出力した個別助言を提供するもので、2回の質問票に回答した終了者では、10ヵ月後も家庭血圧値の低下と習慣改善が維持されていることをすでに報告した。しかし、参加者の2/3を占める1回参加者での変化は不明であったため、追跡調査によって、その診療所血圧と習慣の変化を終了群と比較しながら観察した。1回参加者がプログラム上で確実に行ったことは、小冊子による情報の獲得と質問票上での習慣の自己評価であり、それに対する個別助言を受け取っていた。終了者は、それに加えて目標行動の設定と血圧と行動のセルフモニタリングを行い、2回目の個別助言を受け取っていた。2002年1〜3月までにプログラムに参加し、診療所血圧の記載のあった693名に、10ヵ月後に郵送による追跡調査を行った。回答した1回群248名(回収率56.1%)と終了群220名(回収率87.6%)のうち、薬剤変更がなかった1回群126名と終了群110名の計236名で診療所血圧と習慣行動の変化を観察した。診療所血圧は質問票に測定日時とともに記載された値を採用した。習慣変化は食事11項目と運動6項目、飲酒、睡眠等4項目を、同一の質問で4段階評価をさせるとともに、食事7項目と運動1項目についての主観的改善の有無を自己評価させた。前者を客観評価、後者を主観評価としそれぞれの改善数と血圧変化との関係を検討した。また、介入前の特性を1回群と終了群で比較するとともに、両群で、追跡調査への回答者と非回答者の特性を比較し、選択バイアスを検討した。その結果、終了群が1回群より自己測定血圧の記録率が高く、両群の回答者で年齢が高く、有職率と喫煙率は非回答者で高かった。介入前から10ヵ月後にかけて診療所血圧値は両群とも有意に低下し、1回群では147.0/87.6 mmHgから141.6/83.4 mmHgへと–5.5/–4.2 mmHg、終了群では148.1/88.5 mmHgから139.4/82.1 mmHgへと–8.8/–6.5 mmHg低下し、終了群の拡張期血圧値の低下は1回群より大きい傾向が認められた。生活習慣の改善については、全体として終了群が1回群より優れていた。客観的習慣改善数と両群の降圧とに、また、主観的習慣改善数と1回群の降圧とに関係が認められ、本研究の降圧効果は生活習慣改善によるものである可能性が示唆された。個々の血圧測定条件のばらつき、群間の回収率の差、意欲やコンプライアンスの差など研究上の制約はあるが、以上の結果から、血圧コントロールの教育において、方法によっては1回のみの指導介入でも長期の習慣改善と降圧効果を達成できる可能性があると考えられた。今後、無作為介入試験の実施、指導ツールとしての効果的な適用法の検討などが課題である。

著者関連情報
© 2006 日本行動医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top