2010 年 15 巻 1 号 p. 10-21
本研究の目的は、アルツハイマー型認知症(AD)患者のQOL低下の要因である認知症の行動および精神症状(BPSD)に対する治療プログラムを確立することであった。BPSDは多彩な症状の総称であるが、本研究では最も患者を苦しませ介護の負担ともなる精神症状の一つである不安反応を標的症状とした。本研究において検討するリラクセーションプログラムは、健常者に対し有効であることが認められており(例えば、百々他、2003)、認知機能障害を有する患者においても実施可能であった(百々・坂野、2007)。本研究は先行研究の結果を踏まえ、AD患者を対象とし、通常治療との比較ならびにプログラムのプラセボ効果を検討した。その結果、継続的なプログラムへの参加により不安反応の抑制が認められた。またこの効果はプラセボ効果によるものではなかった。さらに通常治療のみでは身体的QOLは悪化するが、定期的に心理学的介入を行うことで維持することが可能であることが認められた。