行動医学研究
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15 巻, 1 号
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原著
  • 村田 伸, 大山 美智江, 大田尾 浩, 村田 潤, 木村 裕子, 豊田 謙二, 津田 彰
    2010 年15 巻1 号 p. 1-9
    発行日: 2010年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    本研究は、地域在住の高齢者181名(平均年齢74.3±5.7歳)における運動習慣の有無と身体・認知・心理機能を調査し、それらの関連性について検討した。運動習慣有り群81名と無し群100名の身体・認知・心理機能について、性と年齢を調整した共分散分析で比較した結果、運動習慣有り群は無し群に比べて、下肢筋力や歩行能力などの身体機能、知的機能や注意機能などの認知機能、主観的健康感や生活満足度などの心理機能が有意に良好な値を示した。これらの知見から、高齢者が運動を定期的に行うことは、高齢者の健康増進に結びついていることが示された。とくに、下肢筋力や歩行能力などの身体機能、および注意機能の老化抑制効果が期待でき、転倒予防につながる可能性がある。さらには、知的機能の低下を抑制する効果や精神的健康状態を高める作用も期待できることから、高齢者の効果的な介護予防の手段として期待される。
  • 百々 尚美, 坂野 雄二
    2010 年15 巻1 号 p. 10-21
    発行日: 2010年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、アルツハイマー型認知症(AD)患者のQOL低下の要因である認知症の行動および精神症状(BPSD)に対する治療プログラムを確立することであった。BPSDは多彩な症状の総称であるが、本研究では最も患者を苦しませ介護の負担ともなる精神症状の一つである不安反応を標的症状とした。本研究において検討するリラクセーションプログラムは、健常者に対し有効であることが認められており(例えば、百々他、2003)、認知機能障害を有する患者においても実施可能であった(百々・坂野、2007)。本研究は先行研究の結果を踏まえ、AD患者を対象とし、通常治療との比較ならびにプログラムのプラセボ効果を検討した。その結果、継続的なプログラムへの参加により不安反応の抑制が認められた。またこの効果はプラセボ効果によるものではなかった。さらに通常治療のみでは身体的QOLは悪化するが、定期的に心理学的介入を行うことで維持することが可能であることが認められた。
  • —数息観による注意の統制を用いた検討—
    山本 隆一郎, 野村 忍
    2010 年15 巻1 号 p. 22-32
    発行日: 2010年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,実際の就寝環境における入眠時選択的注意が入眠困難に及ぼす影響を2週間のホームワーク実験によって検証することが目的であった。13名の入眠困難者は実験群と統制群に割り付けられた。実験群は,後半の1週間,就寝時の注意統制のため毎日寝床で数息観(自発的な呼吸を数える禅瞑想課題)を実施した。実験群と統制群における,入眠時選択的注意尺度得点,入眠時認知活動尺度得点,1週間の平均入眠潜時の違いを検討するため,2要因反復測定分散分析(2群×2時期)を行った。その結果,入眠時選択的注意得点において有意な交互作用が確認された(F(1,11)=6.24,p=.030)。また入眠時認知活動尺度の第2因子(眠れないことへの不安)得点において交互作用の有意傾向が確認され(F(1,11)=3.78, p=.078)た。さらに1週間の入眠潜時において交互作用の有意傾向が確認された(F(1.11)=3.35, p=.095)。本研究より,入眠時選択的注意の入眠困難に及ぼす影響が示唆され,数息観による注意統制が入眠困難に効果的である可能性が考えられた。
  • 岡村 尚昌, 津田 彰, 矢島 潤平, 堀内 聡, 松石 豊次郎
    2010 年15 巻1 号 p. 33-40
    発行日: 2010年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    大学生の睡眠時間と心身の健康との関連性を明らかにするために、GHQ-28による主観的評定と精神神経免疫学的(PNI)反応[3-methoxy-4-hydroxyphenylglychol(MHPG)含有量、免疫グロブリン(Ig)A抗体産生量]を用いた客観的評価から、睡眠時間の長さによって、心身のストレスの自覚とノルアドレナリン神経系と免疫系の活性がどのように異なるのか検討した。研究参加の同意が得られた健康な大学生205名(男性110名、女性95名、年齢18.6±1.0)を対象に睡眠時間を調査し、最適睡眠時間群(AS:Adequate Sleep)(6〜8時間睡眠)を35名、短時間睡眠群(SS: short sleep)(5時間以下の睡眠)33名と長時間睡眠群(LS: long sleep)(9時間以上の睡眠)28名をそれぞれ抽出した。講義時に、集団一斉法にてGHQ-28への記入を求め、PNI反応を測定するために唾液の採取を行った.LS群のGHQ-28得点は、「社会的活動障害」および「うつ傾向」下位尺度でAS群とSS群に比較して有意に高値であった。一方、SS群はASに比較して「身体症状」下位尺度得点が有意に高かった。SS群の唾液中free-MHPGは、AS群と異ならなかったが、LS群に比較して有意に高く、s-IgAは有意に低かった。ロジスティック回帰分析の結果は、中等度以上の「身体的症状」、「社会的活動障害」と「うつ傾向」症状が短時間もしくは長時間睡眠と有意に関連していることを明らかにした。以上の知見から、6〜8時間睡眠が最も心身の健康と関連していることが示された。また、睡眠時間いかんによって唾液を指標にして得られたPNI反応が異なったことは、今後、大学生のストレス関連疾患の予防や健康増進活動のために、睡眠の重要性を示す客観的証拠となると考える。
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