行動医学研究
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原著
コーピングの有効性におけるGoodness-of-Fit仮説とコーピングの選択理由の関連
森本 浩志木下 奈緒子嶋田 洋徳
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2012 年 18 巻 1 号 p. 3-11

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抄録
ストレッサーのコントロール可能性の評価に基づいてコーピングを選択することが、ストレス反応の低減に有効であるとするGoodness-of-fit仮説について、これまで多くの検討が行われてきた。しかし、これまでGoodness-of-fit仮説を支持する知見と支持しない知見があり、一貫した知見が得られていない。本研究では、この要因として、何のためにコーピングを行ったのかというコーピングの選択理由を取りあげ、コーピングの有効性におけるGoodness-of-fit仮説とコーピングの選択理由の関連について検討した。ストレッサー、コーピング、ストレッサーのコントロール可能性の評価、コーピングの選択理由(目標接近的な選択と回避的選択)、ストレス反応について、勤労者351名を対象に調査を行い282名から回答を得た。このうち回答に不備のあった者を除いた274名のデータを分析対象とした。ストレッサー(職務ストレス、対人ストレス)と行ったコーピング(問題焦点型、情動焦点型、組み合わせ型)の種類に基づいて分析対象者を分類し、コントロール可能性の評価およびコーピングの選択理由とストレス反応の関連について相関分析と階層的重回帰分析を行った。その結果、コントロール可能性の評価は、Goodness-of-fit仮説の指摘通り、問題焦点群においてはストレス反応と負の相関が見られたが、情動焦点群においてはGoodness-of-fit仮説の指摘とは異なり、ストレス反応と負の相関が見られた。コーピングの選択理由については、情動焦点群および組み合わせ群においてのみ、ストレス反応と有意な相関が見られた。コントロール可能性の評価とコーピングの選択理由の交互作用は有意ではなかった。これらの結果から、コントロール可能性の評価とコーピングの選択理由は、それぞれ独立してコーピングの有効性に関与していることが示唆された。
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© 2012 日本行動医学会
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