抄録
本研究の目的は、反すうの中でもネガティブな認知的処理を表す考え込み(brooding)と刺激の感情価の交互作 用による検索誘導性忘却の差異を検討することであった。健康な大学生・大学院生37名を対象に、検索経験パラダイムと質問紙 調査を実施した。検索経験パラダイムでは、テスト段階の正再生率を測定した。分散分析の結果、考え込みの得点に関わらず、 ニュートラル刺激では検索誘導性忘却が生じたが、ネガティブ刺激では検索誘導性忘却が生じなかった。こうした結果から、制止 説の観点から、考え込みによって活性化される個人内の記憶表象と刺激の表象の競合、加えて刺激間の競合による記憶検索の制 御的処理の違いについて考察された。