行動医学研究
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総説
中小企業(中小事業所)の現場の 産業医・実施者の経験から
水野 光仁
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2018 年 23 巻 2 号 p. 89-97

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抄録

2016年より始まったいわゆるストレスチェック制度について、複数の中小事業所で産業医及び実施者として関わっ た経験から以下について述べる。①本制度の実施には事業者が多数の点について能動的に決定する必要がある。②実施するには事業者の実施能力をよく鑑みたうえで、適切な実施業者と共同して実施準備を進めていく必要がある。③本制度の円滑な実施及び有効活用のためには職業性ストレス簡易調査票のみにとどまらない検査方法についての工夫が望ましい。④同様の理由で実施方式は事業所の状況に応じて工夫する必要がある。⑤面接指導の実施においては事業者における既存の産業保健体制(産業医、保健師、心理士)の活用が望ましい。⑥面接指導の内容は各事業所における就業上のメンタルヘルス課題が多いため、面接医師はその事業所の産業医等、事業所になじみのある医師が望ましい。⑦集団分析については制度上の利用制約や利用上の注意点があるが、グループワーク等を通じて職場のメンタルヘルス対策を推進する状況を醸成し、その基礎情報とすることが望ましい。⑧本制度は就業者が自らのストレス状況と向き合う機会を提供しているだけでなく、事業所における産業保健体制の点検・周知の機会にもな り、またメンタルヘルスに関する相談をする機会としても貴重である。このため中小事業所では積極的な活用姿勢が望ましい。

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