行動医学研究
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原著
オンライン診療における医療者の共感的態度:医療者の応答と発話内容に関するテキスト解析
冨澤 政也市倉 加奈子千葉 宏毅横山 仁史伊藤 大輔村山 孝之村上 健川守田 拓志深瀬 裕子田ヶ谷 浩邦
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2024 年 29 巻 2 号 p. 60-68

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抄録

目的:新型コロナウイルス感染症の拡大により、特に精神医学の領域で遠隔医療が広く採用されるようになった。オンライン診療の効果を高めるためには、一般的なオンライン・コミュニケーションスキルを磨くことが不可欠である。そこで本研究では、テキスト分析を用いて、患者が共感的態度と認識できる医療者の応答の仕方と発話内容を明らかにすることを目的とした。方法:2021年12月から2022年2月にかけて医療者および一般人を研究対象者、模擬患者会のメンバーを研究補助者として模擬オンライン診療を実施した。参加者には医療者役を演じるように依頼した。研究補助者には、認知症の母親と同居し、不眠と疲労を経験している60代の女性患者役を演じてもらい、知覚された共感尺度(PES:Perceived Empathy Scale)への回答を依頼した。結果:患者役によって評価されたPES得点をもとに、医療者役を共感高群・中群・低群に分類した。またテキスト分析から、医療者の応答は4つのパターン(確認、疑問、共感、指示・助言)に、発話内容は8つのパターンに分類された。対応分析の結果から、応答の仕方については「確認」が共感高群で多くみられた。また発話内容については、「自身の身体不調」についての発話が共感高群で多くみられた。 考察:本研究では、望ましい医療者の態度について、実証的データを示した点で意義深い。結果から、相手の言ったことを繰り返す「確認」応答を多く行うこと、「患者自身の身体症状」に焦点を当てることが共感的態度として重要であることが示された。

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© 日本行動医学会
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