行動医学研究
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総説
タイプA行動パターンとストレス反応
佐藤 豪
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1996 年 3 巻 1 号 p. 8-15

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抄録

タイプA行動パターンは、冠動脈疾患の発症の原因となる行動様式として、近年広く知られるようになった。本論文ではタイプA行動パターンと冠動脈疾患を結びつける要因としてストレスとそれに対する心理・生理的反応との関連について検討することを目的とする。
タイプA者は自己価値が様々な外的要因によって変動しやすいものと感じているために、絶えず自尊心についての危機感を持っている。またタイプA行動パターンの形成には信頼性の乏しい対人関係や、幼少期における両親の達成努力に重きを置いた養育態度が寄与しているものと考えられる。
タイプA者はタイプB者よりも自らが直面したストレスを過大に評価し、より危機的状況ととらえやすい傾向を持ち、そのためにストレスに対して能動的対処を行おうとすることが示されている。このような対処行動中にはタイプA者はタイプB者に比べて交感神経系の興奮の増大、内分泌学的反応性の昂進、また心理的ストレス反応の増大を示すことが明らかとなっている。交感神経系の興奮の持続は、循環器系、内分泌学的な機能の異常を引き起こし、冠動脈疾患の発症に寄与しているものと考えられる。
またタイプA行動パターンが末梢のβアドレナリン系の反応抑制によって減少するという研究から、末梢の反応性もタイプA行動パターンの形成に寄与している可能性が示されてきた。さらに中枢性のドーパミン作動系機能とJenkins Activity Surveyの検査成績からタイプA行動パターンにはアレキシサイミア的特徴があることが示唆された。さらにドーパミン作動系機能の歪みと幼少期における両親との分離体験の関連性を示す研究からタイプAの形成過程には幼少期の心理的体験が関与しており、それがドーパミン作動系機能などの心理・神経・内分泌機能の歪みを起こし、タイプAの形成に関与する可能性を示唆した。本論文では、タイプA行動パターンの性質の解明のためには心理・神経・内分泌学的研究と、心理・社会的研究の両方が必要であることを示した。

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© 1996 日本行動医学会
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