行動医学研究
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原著
中年者における身体不活動を規定する心理的要因
―運動に関する意思決定のバランス―
岡 浩一朗平井 啓堤 俊彦
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2003 年 9 巻 1 号 p. 23-30

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抄録

わが国でも行動変容のトランスセオレティカル・モデルは、身体活動増進に関する研究に応用されつつある。本研究は、運動することの恩恵と負担を測定するための運動に関する意思決定のバランス尺度を開発した。加えて、運動行動の変容段階の分布を調べ、運動に関する意思決定のバランスとの関係について検討した。608名の中年者が、運動することの恩恵 (pros) と負担 (cons) に関する内容で構成される30項目の調査票に回答した。ステップワイズ因子分析の結果、次のような2因子が抽出された: 1つは、10項目の運動に対するポジティブな知覚で構成される恩恵に関する内容、もう一つは、運動することを避けるような負担に関する内容で構成されている。計量心理学的特性について分析を行った結果、運動に関する意思決定のバランス尺度は、高い信頼性と妥当性を有することが示された。運動行動の変容段階に対する調査対象の回答から、203名 (33.4%) が無関心期、123名 (20.2%) が関心期、114名 (18.8%) が準備期、48名 (7.9%) が実行期、120名 (19.7%) が維持期に属していた。運動行動の変容の5段階別にみた、恩恵、負担および意思決定のバランス (恩恵から負担を引いた) 平均得点において有意差が認められた。定期的に運動をしている人と比べて運動を始めていない人は、運動することについて感じる恩恵とほぼ同じくらい負担を感じていた。わが国における身体不活動に関連する制御可能な要因を理解するためのさらなる継続的な研究と介入効果を示す実証研究が、身体活動および運動を効果的に増進させるための重要な情報をもたらすであろう。

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© 2003 日本行動医学会
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