行動医学研究
Online ISSN : 2188-0085
Print ISSN : 1341-6790
ISSN-L : 1341-6790
短報
セルフモニタリングによる境界知能者の行動修正に関する事例研究
不安軽減に効果的な介入成分と自尊心に及ぼす影響
本田 久仁子
著者情報
ジャーナル フリー

2003 年 9 巻 1 号 p. 31-35

詳細
抄録

目的 本研究の対象者は、思い過ごしによる怒りや不安に悩んでいた。また、確認を過剰に行なう傾向があり、それを気にしていた。本人の精神的苦痛には自尊心の欠如が深く関係すると見られた。そこで、自尊心を高める目的で確認行動の減少のための介入を試みた。ただしこの標的行動には非常に高い不安が伴っていた。
本研究の目的は、本事例を通し、(1) 高不安を伴う行動の修正に効果的な介入、(2) 行動修正と自尊心の関係、を検討することであった。
対象 30代男性。境界知能 (田中ビネー知能検査・IQ72)。アスペルガー症候群。
方法 独立変数は、(1) セルフモニタリング、(2) フィードバック、(3) 励ましの言葉、(4) 数かぞえ、であった。従属変数は、(1) 標的行動頻度、(2) 標的行動に伴う不安程度、(3) 自尊心、であった。
測定は、標的行動頻度は対象者の自己記録により、不安程度はSUD得点により、自尊心は自尊心尺度の質問紙により行なった。
手続きは、介入1: セルフモニタリング+フィードバック+励ましの言葉、介入2: セルフモニタリング+フィードバック+数かぞえの順序で行なった。
結果 標的行動頻度はベースライン (BL) から介入1にかけて減少したが、最終目標値には達しなかった。介入2の間に最終目標値まで達して安定を示し、フォローアップではその値を保った。
SUD得点は介入1でBLよりも更に上昇しその水準を保った。しかし介入2で大幅に減少し、フォローアップでは低い値を保った。
自尊感情の得点は介入前から介入後にかけて上昇した。
結論 (1) 標的行動が高い不安を伴う場合、不安軽減の実現が行動修正を促進する上で重要である。(2) 本人にとって重要度の高い行動の修正が自尊心を高めることが本事例でも支持された。

著者関連情報
© 2003 日本行動医学会
前の記事
feedback
Top