抄録
本研究は,引っ込み思案の幼児(年中児2名と年長児1名)に顕著に出現していた社会的孤立行動を低減させるためにコーチング法に基づく社会的スキル訓練を彼らに適用した。ターゲットスキルは,(a)遊びへの参加,(b)適切な社会的働きかけ,(c)適切な応答,の3つの社会的スキルであった。10セッショソからなるスキル訓練の結果,3名の被験者はこれらの社会的スキルを習得し,自由遊び場面からなる般化セッショソにおいてもこれらを使用することができた。また,ベースライン期に顕著であった社会的孤立行動は,訓練後いずれの被験者においても急激に減少し,代わって,協調的遊びないしは平行遊びが増加した。しかし,年中児の2名の被験者は,訓練終了後に自然場面(般化場面)において習得した社会的スキルをほとんど用いることがなかった。1名の年長児は,訓練終了後には他の仲間よりもはるかに多く協調的遊びに参加し,社会的スキルの使用も安定していた。これらの結果に基づいて幼児に対するより効果的な社会的スキル訓練の方法論について考察した。