抄録
本研究は,Wattseta1.(1986)の研究を基に,恐怖イメージの"鮮明さ"に含まれると仮定された(1)イメージの"詳しさ",(2)イメージのもつ"迫力"といった二つの成分を検討したものである。実験1では,恐怖群と統制群に中性場面と恐怖場面の想起を求め,その内容の報告から恐怖を喚起する揚面は詳しく想起されなかった可能性が示された。実験IIでは,二つの成分の差異を大きくすると思われる教示を用い,中性場面と恐怖場面の想起を求めた。その結果,恐怖を喚起する揚面ではより大きな生理的覚醒を伴い(HR,SCR),イメージの詳しさが低下する一方で,イメージの迫力は強まると報告された。だが両実験とも鮮明さの評定には差異は認みられず,これまでの研究においてイメージの"鮮明さ"が曖昧なまま扱われていた可能性が考えられた。