抄録
本研究では,ピアノ演奏の実技試験場面を用い,パフォーマンス不安状況における身体症状知覚について検討を行った.音楽大学生女子196名を対象に,試験終了直後に身体症状知覚を含めた演奏不安についての調査を行った.その結果,ピアノ演奏場面においては,演奏を直接的に阻害するような手足や指先の身体症状が,全身的な身体症状に比べて知覚されやすいことが明らかになった.重回帰分析の結果,手足や指先の身体症状の知覚は,症状知覚以外の演奏中の不安反応とともに,演奏後の不安に促進的な影響を及ぼすことが明らかになった.一方,全身的な身体症状の知覚は演奏後の不安に有意な影響を及ぼしていないことが示された.