抄録
本研究では,自閉症児1名について,写真刺激に対してワープロを用いた文章構成反応を形成するための条件を明らかにすることを目的とした。まず,文字のキー入力反応および機能キーの使用を確立した後,単語構成訓練を行ない,その獲得過程を分析した。次に,刺激セットAについて,ワープロ反応による文章構成を訓練し,音声言語反応の成立を等価性テストにおいて評価した。刺激セットBについては,音声言語反応を訓練し,ワープロ反応による文章構成の成立を評価した。その結果,ワープロ反応および音声言語反応との間で機能的等価性が成立することが示された。ワープロによる文章構成反応は6カ月後においても維持されていた。さらに,直接訓練されていない刺激についても,文章を用いたワープロ反応が生起した。これらの結果を,発達障害児に対するワープロ・スキル形成の意義および言語行動系の中での機能という点から考察した。