11ヵ月の問,重症高所恐怖症と外出恐怖に悩む一症例が9日間でイメージ系統的脱感作を達成し,次いで28日間の現実脱感作によって,全治に至ることが出来た。短期治癒の要因として,病態としては,社会恐怖その他の神経症の合併のないこと,罹病期間の比較的短いこと,患者特性として,高い知的レベル,強い治療動機づけ,回避傾向の少なさなどが考察された。投薬は本治療前後に変法なく,従ってその効果は相殺されると思われ,また,恐怖に対する認知再構成も困難であり,本例の治療経験は改めて脱感作法のすぐれた有効性とその適応要因を示していると思われる。