抄録
本研究の目的は、条件刺激に対する不快感情の操作が恐怖学習過程に及ぼす効果を検討することであった。被験者には、大学生・大学院生28名を用い、実験群と統制群に14名ずつ分けた。イメージ訓練において、実験群では恐怖関連刺激の不快感情を、統制群では恐怖非関連刺激の不快感情をそれぞれ低下させる操作を行った。イメージ訓練の後に、両群に恐怖条件づけ・消去手続きを行った。条件づけに用いた条件刺激は恐怖関連刺激であり、無条件刺激として白色雑音を用いた。おもな結果は以下のとおりである。(1)条件づけ中に、実験群のほうが統制群とくらべ、条件刺激に対する皮膚コンダクタンス反応、嫌悪度、覚醒度、不安度が低かった。(2)消去後、実験群では覚醒度・不安度が消去されていたが、統制群では消去されていなかった。これらの結果は、恐怖学習前に恐怖関連刺激の不快感情を低下させることで、その後の恐怖学習が抑制される可能性があることを示している。