行動療法研究
Online ISSN : 2424-2594
Print ISSN : 0910-6529
怒りの表出傾向が認知行動療法の効果に及ぼす影響 : 行動に焦点をあてた参加者主体の社会的スキル訓練を適用して(原著,<特集>障害児の積極的行動支援)
増田 智美長江 信和根建 金男
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2002 年 28 巻 2 号 p. 123-135

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抄録
本研究では、大学生の怒りに対する認知行動療法(CBT)、すなわちISST(inductive social skills training)の効果と同時に、個人差である怒りの表出傾向が介入効果に相違をもたらすかどうかを検討した。被験者は、怒りの特性が高く、かつ怒りの表出傾向の高い者(AO高者)と怒りの抑制傾向の高い者(AI高者)の計42名であった。 AO高者とAI高者それぞれを、 CBT群と統制(Ctrl)群に割り当て、2つのCBT群には、怒りの行動的反応を標的とするCBTを4週間実施した。その結果、 Ctrl群と比較して、CBT群では、介入直後の怒りの特性だけでなく、敵意や不安においても有意な低減がみられ、その効果は3か月後のフォローアップ時でも維持されていた。また、表出傾向別にみると、怒りの表出傾向が高い被験者のほうが低い被験者よりも効果が著しかった。怒りを表出する傾向の高い被験者には、行動的反応を標的としたCBTが有効であることが判明した。 CBTを施す際に、怒りの表出傾向まで考慮することの意義が示唆された。
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© 2002 一般社団法人 日本認知・行動療法学会
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